三嶺塾報告・・・自然を壊さないエコツアーの勧め   戻る

 第9回三嶺塾の中で渡部孝氏(徳島・三嶺を守る会代表)が「エコツアー」と題し話しました。
 その中から抜粋して報告します。
                       11月19日 徳島・三嶺を守る会 事務局

 エコツアーとは、エコロジーすなわち生物の生態と自然環境の間の関係を観察しながら、その中に溶け込んで旅行、または登山することである。剣山から三嶺、さらに天狗塚に至る連山はまさにエコツアーに最適な山々なのである。剣山はリフトができ、自然に対する保護策が十分に取られないまま登山者が急増してしまった。自然を親しむ登山者が増えることは何も悪いことではない。しかし、山は荒れ、こころある登山者には評判の悪い山のひとつになってしまった。さらに交通の便がよくなりすぎて滞在型の観光客は少なくなり、都会ではもう見られなくなった満天の星を、また雲海から日に出をじっくり楽しむような山小屋での泊り客は減ってきている。

 三嶺のような山容のやさしく美しい山は珍しい。特に山頂から西に向かって天狗塚との間にあるミヤマクマザサに覆われた西熊山の景観は格別である。クマザサは標高1500mぐらいの山ならどこでもよく見られる。しかし一の森から三嶺、天狗塚を経てさらに西方に伸びる笹原の雄大さは日本ではここだけである。

 費用のかかるいわゆるハコモノを造って観光客を誘致し、第三セクターで運営したものの、借財を残し地元住民を苦しめる話をよく聞く。こういったいわゆる「ハード・パス」のやり方は、過疎地には無理がある。むしろエコツアーのような「ソフト・パス」のほうがはるかに効果的で間違いがないように思う。具体的には徳島県側としては今最も利用されている名頃から登山道までの三嶺林道を活用する。個人の車の入山を認めず、シャトルバスまたはシャトルタクシーを利用してもらう。これも地元の収入になる。登山者には出費になるなるが、山を傷めるのも登山者、自然を守りかつ楽しむためにそれくらいの協力はしようではないか。また、不慣れな登山客のために公認のガイドを出す。ガイドには自然と生物の共生など、いわゆるエコロジーの説明が出来るよう勉強していただき、登山客が安心して充分山を楽しめるようにする。夜は宿舎に泊まり山の人と歓談する。これこそエコツアーである。登山客は滞在型になり地元も潤う。

 ただしこのようなエコツアーを実現するには必要なことが幾つかある。まず地元の人、祖谷の人が自分たちの地域の特色、三嶺の良さを改めて認識すことである。三嶺は剣山の奥の院で日本的表現を使うなら聖峰、まさに霊峰であることを再認識すことである。もうひとつ重要なことは山の自然環境を出来るだけそのままの姿で保全することである。長く大きく広がる笹原、群生するコメツツジ。特にコメツツジを見るとこの厳しい環
境の中でよくも何百年もがんばって生きていると、心から敬服する。

 永年、岳人の仲間であった三嶺、いつまでもそうあって欲しい。また、次の世代に聖地として残しておこうではないか。私たちの努力と地元の理解と協力があれば十分可能なことである。エコツアーリズムがこれを解決してくれると思う。(11月1日)

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